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労働者軽視が問題

こんにちは 宮本一三 です

なかなか時間が取れず、10日ぶりのブログ更新となりました。


さて、先日の「日本だけゼロ成長」というタイトルで、「最近の10年間の低迷は、政府の政策ミスによるものが大であるといわざるをえないのである。アメリカ型の自由競争を追究することが経済を再生・強化する道だと信じた自民党小泉政権の経済政策に大きな問題があったのである。」と指摘しました。本日は、何が問題だったかを検証してみましょう。

まず、以下のグラフをご覧下さい。
労働者の推移

(出典:総務省資料)

このグラフは、正規労働者と非正規労働者の推移をグラフにしたモノである。
これを見ると非正規労働者はこの20年間で2倍以上に増えていることがわかるし、逆に正規労働者は、1998年頃を境に急に減っていることが分かる。
これは何を意味しているのだろうか。実は労働者派遣法が95年頃から漸次改正され、99年の改正で、対象職種が大きく拡大したのである。明記したもの以外は原則自由化、いわゆるポジティブリストからネガティブリストへの変更がされたのである。これらの改正が、上記のグラフの変遷に大きく影響を与えているのは間違いないところである。

さらに内閣府の発表によれば雇用者報酬は、97年度の280兆円から2007年度の263兆円へと6%減少している。バブル崩壊後の不況期でも減少しなかったのにかかわらずである。
以下のグラフを参照下さい。
労働分配率の推移

(出典:内閣府ホームページより作成)

このグラフをみると97年度から2007年度は雇用者報酬だけでなく、労働分配率(雇用者報酬÷国民所得)もはっきり低下している。特に2000年度以降が顕著である。
企業側が正規労働者から非正規労働者へシフトして、雇用者報酬を削った結果である。

では、企業は減らした報酬をどうしたのか。まず以下のグラフを見て下さい。

従業員給与と配当金推移


このグラフは、従業員給与と企業の配当金の対比である。
1980~2001年度はほぼ一定であったが、2002年度から配当重視の傾向がはっきりと示されている。


では、企業はこの10年間は儲かっていないのであろうか。
そうであるならばある程度は納得もできるのだか、企業の内部留保(広義)をみるとここ10年間でなんと約2倍になっているのである。

企業の内部留保(広義)
1998年度 209兆円
  → 2008年度428兆円
 
(法人企業統計調査より計算)

株主配当金の割合を増やしながら、労働賃金の圧縮と法人税率の引き下げで、企業は内部留保を大幅に拡大したのである。特に資本金10億円を超える大企業(全企業277万社のわずか0.2%)でほぼ100兆円も増えたのである。

これこそが、私が先日指摘した、小泉政権の推し進めた政策、アメリカ型の競争原理至上主義(市場原理主義、株主重視ともいえよう)と非正規労働者の解禁の結果である。

株主重視、大企業優遇、労働者軽視の風潮には大いに問題がある。
この問題が、日本経済の低迷の大きな要因の一つとなっている。

余談であるが、この小泉政権の推し進めた競争原理至上主義は、
1975年頃までに確立された「終身雇用」「年功賃金制」を中心とした雇用慣行を変えてしまったのである。
この日本の雇用慣行制度は、いわゆる「賃金後払い」制度ともいえたもので、若い従業員は壮年以降の賃上げに期待して、現状は安い給料でも一所懸命働いてきたのである。
ところが、「そんな約束はしていない。能力主義だ。競争原理だ。」とこうなってきたのである。
子どもにお金がかかる壮年以降も賃金が伸びにくくなったのである。政府が「子ども手当」に力を注ぐべき大きな理由の一つといえよう。

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テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

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miyamoto13

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宮本一三(みやもといちぞう)

兵庫県南あわじ市に生まれ、洲本中学、洲本高校、一橋大学経済学部を卒業、
大蔵省入省。
米国ハーバード大学大学院で経済学博士号を得る。博士論文の一部が米国シカゴ大学 出版の「Economic Development and Cultural Change」に掲載さる。

昭和41年、米国ワシントンのIMF(国際通貨基金)に出向、インドネシア政府経済顧問として特命派遣され、インフレを鎮静化、財政を立て直す。


昭和47年、日中国交回復に参画、日中航空協定締結のため北京に1ヶ月滞在。

昭和49年、国税庁直税部法人税課長。昭和54年、大蔵省国際金融局総務課長。

昭和55年、大蔵省大臣官房審議官。昭和56年、名古屋国税局長。

平成5年、衆議員議員当選(以後3期10年勤める)。

現在、東北福祉大学特任教授、日本国際通商支援協同組合理事長、日本文字文化機構副理事長

趣味は読書、囲碁、ゴルフ。

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