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財政再建に関する大蔵省見解(1980発表)

こんにちは 宮本一三です。


前回のタイトルで
「本当は、日本の財政事情は崩壊寸前とはいえないのではないか、財政出動する余裕は充分あるのではないかと私は考えています。」「このことは次回以降に議論します。」
とお伝えしました。

今日は、その議論の前提として、財政再建に関して旧大蔵省はどう考えてきたのかを私の経験も交えてお伝えしましょう。

さて日本は戦前の戦費調達国債の苦い経験から、戦後は1965年まで無借金経営に徹してきました。しかし1965年7月に国債発行を閣議決定し、最初の数年は小幅な発行に抑制していましたが、1975年頃から急速に発行高が拡大し、1980年度末には70兆円を超える見込みとなりました。

このころから数年後には100兆円を超え、やがて200兆円、300兆円の大借金財政になるのではないかと大蔵省内で危惧されるようになりました。
そこで、1980年7月、鈴木善幸内閣で、お茶の間の人気者であった渡辺美智雄氏が大蔵大臣に就任すると、その機会をとらえ、「今こそ財政再建が必要だ」とのキャンペーンを大蔵省が組織をあげて本格的に開始したのです。「歳出百科」なる小冊子を発行するなどして財政再建の必要性を国民に広く訴えたのです。

ところが、「大蔵省の考え方は間違っている」と東京大学の内田忠夫教授が、日経新聞紙上で大蔵大臣宛に公開質問状を突きつけてきたのです。これには、渡辺大臣も困ったようで「君達がヤイノヤイノいうからその通りPRしてきたが、大丈夫だろうな。智恵を絞って反論しておけ」ということになり、当時、大臣官房審議官をしていた私が、全責任を持って反論することになったのです。高名な経済学者が相手であるから、位負けしないようにハーバード大学経済学博士号を持つ宮本で対抗しようということだったようです。

このとき、私は大蔵省の関係各部局の幹部とすり合わせを行い、「財政再建に関する大蔵省見解」として公式に発表しました。
このときの見解が、このような形で大蔵省として財政再建に関して発表した初めてのことであり、その後訂正されたり変更されたという話も聞かないので、現在もこの見解がベースになっていると思われます。

さて内容ですが、長くなるので、内田教授の質問部分は省きます(興味がある方は詳細も書いておりますので私の著書「震災に克つ経済」をご覧下さい)が以下の通りです。

財政再建に関する大蔵省見解」の基本部分(要約)

1,経済政策は政治的意思決定過程を経て実行される
 政策当局としては、経済理論の帰結を尊重するが、経済理論の経済政策への適応にあたっては政治的側面にも充分配慮しなければならない。

2,財政の資源配分機能の重要性を確認する必要がある
 財政が国民経済で果たすべき役割は、資源配分機能、所得再配分機能、経済安定機能等がある。財政の資源配分機能は、市場では供給されない公共財を供給することで経済全体の効率を高め、国民生活の向上を図ることである。しかし、あくまで民間経済の補完であり、景気調整に偏重するあまり財政支出が不必要に拡大し、その結果資源の効率的な配分を歪めてはならない。

3,財政の伸縮には対称性がない
 財政は、景気の状況に応じて自由自在に伸縮できるものではない。財政は政治的な意思決定過程を経て運営されており、財政支出は拡大しやすいが逆に圧縮することは大きな抵抗を伴う。財政支出の伸縮には非対称性がある。この点は、実務者としては無視できない。

4,国債の大量発行、累積には大きな弊害がある
(1)大きすぎる政府の出現
 国債の発行による財源は、差し当たりは負担感がない。そのため公共サービスの対価が実際より安価なものとして意識され、財政支出が膨張する。結果、大きすぎる政府を生じさせ、資源の適正配分を阻害する恐れがある。
(2)インフレーションの恐れ
 国債の大量発行が続くと経済情勢の推移によっては民間の資金需要を圧迫することになる。これを避けようとすれば通貨供給量の過大な増加を通じて、金融面から経済にインフレ要因を持ち込む恐れがある。
(3)財政の硬直化
 国債の発行、累積とともに、利払い等の国債費が増加し財政の弾力性が失われる。
(4)世代間の負担の不公正
 国債は、利払いや償還のために税負担を後世代に残し、世代間の負担の不公正を生み出す。後世代に負債を残すという議論に対し、資産としても残ると指摘されることもあるが、国債保有者は任意に対価を支払って国債を取得しているのであって、国債の償還や利払いによって特別の利益を受けることにはならない。元利払いが税によって行われると、国債保有者といえど後世代は、現世代のために税負担を強いられることになる。
また国債の大量発行によって財政消費が拡大し、必要な民間の資本形成が圧迫されることがあれば、将来世代に引き継がれるべき資本ストックが減少することになり、負担が将来世代へ転嫁される。
なお、国債の保有状況によっては、利払い・償還を通じて所得の分配が歪められる恐れもある。
以上


これが、私が発表した大蔵省見解の基本部分であります。

現在の財務官僚もこの考え方をベースにして「財政再建」が必要だと訴えているのです。
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テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

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miyamoto13

Author:miyamoto13
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宮本一三(みやもといちぞう)

兵庫県南あわじ市に生まれ、洲本中学、洲本高校、一橋大学経済学部を卒業、
大蔵省入省。
米国ハーバード大学大学院で経済学博士号を得る。博士論文の一部が米国シカゴ大学 出版の「Economic Development and Cultural Change」に掲載さる。

昭和41年、米国ワシントンのIMF(国際通貨基金)に出向、インドネシア政府経済顧問として特命派遣され、インフレを鎮静化、財政を立て直す。


昭和47年、日中国交回復に参画、日中航空協定締結のため北京に1ヶ月滞在。

昭和49年、国税庁直税部法人税課長。昭和54年、大蔵省国際金融局総務課長。

昭和55年、大蔵省大臣官房審議官。昭和56年、名古屋国税局長。

平成5年、衆議員議員当選(以後3期10年勤める)。

現在、東北福祉大学特任教授、日本国際通商支援協同組合理事長、日本文字文化機構副理事長

趣味は読書、囲碁、ゴルフ。

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